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ゲイリー・ホルト
(エクソダス)
独占インタビュー

今回のアルバムは単独で成立していて
過去のいかなる曲の焼き直しでもない
すべての曲が新鮮で生き生きとしているよ

                                   

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文:川嶋未来 Photo by Tayva Martinez

7年ぶりとなるニュー・アルバム『ペルソナ・ノン・グラータ』をリリースするエクソダス。リーダーでギタリストのゲイリー・ホルトに色々と話を聞いてみた。

 

 

ー ニュー・アルバム『ペルソナ・ノン・グラータ』がリリースになります。前作から7年と、『Tempo of the Damned』は例外とすると、バンド史上一番長い時間がかかりました。これは何故なのでしょう。

 

ゲイリー:単にスレイヤーが忙しかったんだよ。『ブラッド・イン・ブラッド・アウト』を出したあと、基本的に7年間ずっと忙しかったんだ(笑)。他のバンドでツアーに出ていると、なかなか自分のバンドのための時間を見つけるのが難しくてね。2019年11月30日にスレイヤーが終わりになると、すぐにエクソダスに取り掛かったよ。

 

ー 新しいアルバムをどう描写しますか。新しい部分はありますか。それともいつも通りのエクソダスと言うべきでしょうか。

 

ゲイリー:それは答えるのが難しいな。過去にやったことのない新しいものも色々入っていると思う。一方で、何と言うかな、明らかに過去にはやらなかったことをやろうとした訳でもない。過去には聴いたことがなく、だけど微妙な感じに新しいものさ。それはブルータリティの中にふと出てきたり、だけど聴いている人にはわからないかもしれないな。今回のアルバムは単独で成立していて、過去のいかなる曲の焼き直しでもない。すべての曲が新鮮で生き生きとしているよ。どの曲も素晴らしくてキャッチーなんだ。そこがこのアルバムの素晴らしいところさ。ヘヴィな作品だけれど、フックがそこら中にある。

 

ー 今回のアルバムは、トム・ハンティングが所有する山の中の家で録音されています。何故このような決断をしたのですか。

 

ゲイリー:俺たちはいつも自分たちで作ったスタジオでレコーディングしてきて、『Exhibit B: The Human Condition』の時は、ロシア川の近くの別荘を借りてスタジオにしたんだ。その後、トムが山の中に家を買ってね。10台くらい車を停められる巨大なガレージがついて、スタジオを建設するにはパーフェクトなところなんだ。これまではドラムだけはきちんとスタジオで録るようにしてきた。たくさんのチャンネルやマイクが必要になるからね。だけど今回は、自分たちで十分な機材を所有しているから、ドラムも自分たちで録った。レコーディング開始後1ヶ月経っていても、ドラムを録り直すことができたから、最高だったよ。通常はドラムの録音が終われば、ドラムをバラして、そうなるともう録り直しが効かない。今回のやり方だと、いつでも録り直せるし、いつでも実験をすることができた。

 

ー 『Bonded by Blood』を録音した時からは想像もつかなかったような変化ですね。

 

ゲイリー:その通りだよ。当時は普通にスタジオで録音していてね。もうああいうことはやりたくない。もうずっとスタジオでのレコーディングはやっていないよ。『Tempo of the Damned』と『Shovel Headed Kill Machine』以降はやっていない。自分たちでスケジュールの管理をしたいし、車に乗って渋滞の中にスタジオを行く必要もない。こういうことは気が散るからね。朝起きて、朝ごはんを食べて、さっとレコーディングを始めたいんだよ。録音が終わったら、ギターを弾いたりしながら夕飯を食べて、ビールを飲んで。俺たちは今でも仲が良いから、そういうのが楽しいんだ。一緒にいて楽しいんだよ。ヘヴィメタルのサマーキャンプみたいで(笑)。

 

 

 

ー リフのインスピレーションはどのようなところから得るのでしょう。40年もやっていると、自然に思い浮かんでくるのでしょうか。それとも今でも新しいインスピレーション源を探していますか。

 

ゲイリー:リフを書くのは難しくない。自慢するわけじゃないけれど、いつも何千というリフを書いているよ。使われていない素晴らしいリフもある。次々とリフを書いているから、存在を忘れてしまうものもたくさんあるんだ。レコーディングをする時でも、俺は飽きっぽい性格というか、わざわざ以前に書いたリフを掘り出すよりも、新しいリフを書いてしまう。リフを書くのが大好きなんだ。リフへの愛が、俺のインスピレーションなんだろうね。

 

ー リフはギターを弾きながら考えるのでしょうか。

 

ゲイリー:そうだね。たまに、ギターが手近なところに無い場合でも書くけど。ギターが無くても、頭の中でリフを考えることはできる。だけどたいていは、座ってギターを持って、ジャムをしながら書いていって、本当に気に入ったものに行きあたるまで続ける感じ。完全にアクシデント的にリフが出てくることもある。どうして思いついたのかわからないけれど、とても気に入ったというやつ。

 

ー 今回のアルバムのタイトルは『ペルソナ・ノン・グラータ』(=好ましくない人物)ですが、これは具体的に誰かを頭に描いているのでしょうか。

 

ゲイリー:それはみんなに聞かれるんだけどね(笑)。だけど、誰か特定の一人という訳ではなくて、俺が怒りを感じていることすべてを塊にしたようなものさ。それがこの曲のテーマで、一体誰が俺にとって好ましくない人物なのかと聞かれるけれど、この曲を聴いて、自分の好きなように解釈してもらえれば良いよ。政治家かもしれないし、元の夫かもしれない。誰にもなりうるんだ。

 

ー 個人的なものか、それとも例えば政治家のような大きな問題なのか気になっていたのですが。

 

ゲイリー:色々なものを含んでいるんだよ(笑)。

 

ー サリドマイドの問題を取り上げたのがとても興味深いと思いました。私の知っている限りでは、あの薬はアメリカでは認可されなかったので、大きな薬害を逃れていますよね。

 

ゲイリー:この曲を書くにあたってドキュメンタリーを見たり、記事を読んだりと色々と調べたのだけど、ここアメリカではある一人の科学者が、あの薬の認可にストップをかけたんだ。彼は多くの親たちを悪夢から救ったに違いない。欲望のためにあのような被害が出たわけだからね。恐ろしいよ。そもそもあの薬はナチスによってサリンガスの解毒剤として開発されたもので、それをつわりの薬として妊婦に飲ませていたのさ。その結果があれ。恐ろしいことだよ。この曲はとても気に入っているよ。とても恐ろしい雰囲気がある曲になっていて、大好きさ。

 

ー 日本は酷く、ドイツで禁止されたあとも政府は薬の販売を止めず、より被害が拡大しました。

 

ゲイリー:それは知らなかった。50年代終わりから60年代終わりのヨーロッパで、何が起こっているのかが解明されるまでに大きな被害が出たんだよ。

 

ー 曲の最後に赤ちゃんの泣き声が入っていますが、あれはメンバーのお子さんだったりするのでしょうか。

 

ゲイリー:いや、あれは効果音さ。アンディ・スニープが入れて、「このアイデアはどう?」と聞かれたので、「最高だ、ぜひ入れてくれ」って(笑)。

 

ー 「アンチシード」というのは何なのですか。

 

ゲイリー:あれは、銃弾のメタファーのようなもの。銃弾はあらゆるものを育たないようにするという意味。実は、新しめの『マッドマックス』に出てきた言葉をパクったんだ。あの映画の中に「アンチシード」という言葉が使われていて、地面に蒔けばすべてのものが死ぬというもの。銃弾のことさ。

 

ー アートワークは何を表しているのでしょう。

 

ゲイリー:あれはパル・オロフソンの手によるもので、彼と仕事をするのは今回が3回目だけど、今後彼以外にアートワークを頼むことはないんじゃないかな。俺がいくつかアイデアを伝えると、わずか数日後には完璧なスケッチを送ってくるんだ。俺が求めているものが頭の中に見えているんだと思う。方向性が見えているから、彼と仕事をするのは本当に楽なんだよ。今回のカバーも本当に素晴らくて、ステージのバックドロップとしてもとても見栄えがするよ。描かれているのは顔が3つある天使、セラフィム。死の天使というか、血の海と、ゾンビの暴動というか、警官がゾンビをぶちのめしている小さな山の上に君臨している。よく見てみると、コロナの胞子が蒔かれているのがわかると思う。パンデミックのちょっとした参照さ。

 

ー 『ペルソナ・ノン・グラータ』というタイトルとは直接の関係は無いのでしょうか。

 

ゲイリー:無い。もっとアルバムの多くの歌詞を参照するようなアートワークにしたかったんだ。

 

 

ー そもそもヘヴィな音楽にハマったきっかけは何ですか。

 

ゲイリー:俺は6人兄弟の末っ子でね。俺が小さい頃から兄たちがハードロッカーだったんだよ。それでハードロックを聴いて育ったのさ。そこからパンクロックやモーターヘッド、ジューダス・プリーストへと進んでいた訳だけど、もともとはハード・ロックンロールを聴いていたんだ。AC/DC、ナザレス、ブラック・サバス、テッド・ニュージェント、モントローズ、UFO、レインボー、ディープ・パープルとか。

 

ー ギターを弾き始めたきっかけは何だったのでしょう。

 

ゲイリー:こういうアーティストたちのステージを見てだね。テッド・ニュージェントなんかは、ステージでは3mくらいある巨人のように見えたよ。彼や他のギタリストたちみたいにプレイをしたいと思ったんだ。俺は若い頃、人付き合いがとても下手でね。ギターを首から下げると、とても自信が湧いてきて、これが俺のやりたいことだと思ったんだ。

 

ー エクソダスに加入した経緯は何だったのですか。

 

ゲイリー:カークと出会って、彼とは違う高校に行っていたのだけど、10分くらいしか離れていないところに住んでいたんだ。彼と出会うとすぐにとても仲良くなって、ギターのコードをいくつか教えてもらったりした。いくつかリフも習って、そこから先は自分で練習したんだ。そして6ヶ月後にエクソダスに加入しないかって誘われたんだ。エクソダスで初めてプレイした曲は、ジューダス・プリーストの「Grinder」だった。「『Grinder』をジャムするんだけど、バンドに入らないか?」って言われて、「Fuck yeah! もちろん」って答えた(笑)。

 

ー バンド名が「エクソダス」になったのは何故なのですか。

 

ゲイリー:実は知らない(笑)。俺が入る前から決まっていたから、カークかトム・ハンティングに聞いてもらうしかない。「エクソダス」というのは大人数の移動のことだし、ライヴのオーディエンスも大人数の移動だからね、そういう感じなんじゃないかな。

 

ー どんどんテンポが上がっていった理由は何だったのでしょう。

 

ゲイリー:モーターヘッド、ジューダス・プリースト、アイアン・メイデン。その後イギリスのハードコア・パンクにハマっていったというのもある。ディスチャージからの影響は大きいよ。このあたりが俺のルーツなのさ。

 

ー 速くプレイするという明確な意図があったということですか。

 

ゲイリー:あった。もっと速く演奏したいと思っていたよ。他のバンドでは聴いたことがないようなことをやりたいと思っていたんだ。他に誰もやっていないことを、自分たちで作り出そうとしていたんだ。

 

ー 特にポール・ベイロフが加入したあたりで、例えば世界で一番速いバンドをやろうみたいに考えていたという感じですか。

 

ゲイリー:そうだね。特にカークが去った後、俺が主導権を握るようになった。カークがいた頃は、曲はほとんど彼が書いていて、彼の書く曲はスラッシーではあったけれど、もっとメロディックなリフだった。ポール・ベイロフが入って、彼や俺、トムはもっと速く、もっとアグレッシヴに、もっと激しくやりたいと思って、それからリックが加わって、完全に独自の路線を進むようになったのさ。

 

ー スラッシュを作ったのはエクソダスだと証言するアーティストは多いです。デイヴ・エレフソンは「メタリカはエクソダスから影響を受けた。そしてメタリカがメガデス、スレイヤー、アンスラックスに影響を与えた」と発言しています。ご自分ではスラッシュ・メタルの創始者であるという自負はありますか。

 

ゲイリー:俺たちは共同の創始者だと思う。メタリカは、俺が彼らの音楽を耳にする前からスラッシュ・メタル・バンドだった。俺たちは、彼らが俺たちのやっていることを知る前からスラッシュ・バンドだった。初めてメタリカと一緒にプレイをした時、まるで鏡を見ているかのようだったよ。当時メタリカの曲はほとんどデイヴ・ムステインが書いていたからね、デイヴのことを忘れるわけにはいかない。それに両方のバンドでプレイしていたカークもそう。だから俺たち二人、そしてデイヴ・ムステインがスラッシュ・メタルを始めたということだろうね。

 

ー なぜベイエリアで同時にそのような現象が起こったのだと思いますか。

 

ゲイリー:ベイエリアのミュージック・シーンは本当素晴らしかった。クラブもバンドもたくさんあった。それに、NWOBHMや超アンダーグラウンドなメタルをかけるKUSFという最高のインディペンデント・ラジオ局があった。だから、まだ他の人たちが耳にすることのないような音楽をたくさん聴くことができたんだ。まだデモしか出していなかったマーシフル・フェイトとかね。ブートレッグのカセットなんかも色々と持っていた。こういう音楽に関して、他のアメリカの地域よりも、俺たちは有利なスタートだったのさ。ラーズはデンマークから色々持ってきてし。彼は誰よりも早くああいう音楽を聴いていたのさ。

 

ー なるほど。アンダーグラウンドな音楽へのアクセスがあったのですね。

 

ゲイリー:そう。それにアンダーグラウンドな作品を扱うレコード屋もあった。

 

ー 今でもヘヴィメタルは聴きますか。

 

ゲイリー:聴くよ。もちろんメタルだけでなく、色々な音楽を聴くけれどね。モダンなメタルも聴くし、クラシックなロックも聴く。まあ、UFOとレインボーを聴いていればハッピーさ(笑)。これだけ聴いていればいいんだ。すべてが詰まっているからね。

 

ー お気に入りの若いスラッシュ・メタル・バンドはいますか。

 

ゲイリー:ロスト・ソサイエティは最高だね。それからパワー・トリップ。ライリー、安らかに眠ってくれ。ミュニシパル・ウェイストは若いとは言えないけど(笑)。彼らにも言ったんだ、君たちは若手だったっけって(笑)。白髪も出てきているし。いずれにせよ、正しい方向でメタルをプレイしているカッコいいバンドはたくさんいるよ。

 

ー パンデミック後のスラッシュ・シーンはどうなっていると思いますか。

 

ゲイリー:今、みんな音楽に飢えているから、また通常に戻ったら、一気に爆発するんじゃないかな。早く通常に戻ってくれると良いけど。

 

ー アメリカではツアーなども普通に戻りつつあるのでしょうか。

 

ゲイリー:そうだと良いのだけど。先月2回ライヴをやって、ラスヴェガスでプレイした時、その前にやった時よりも2歳年をとっていたよ(笑)。パンデミックでヨーロッパから戻ってきた時は55歳だったのに、ラスヴェガスでは57歳になっていた。失われた時間は長かったから、その埋め合わせをしないと。

 

ー サイコ・ラスヴェガスですか。

 

ゲイリー:そうだよ。

 

ー お客さんの反応はどうでした。

 

ゲイリー:素晴らしかったよ。トムがまだ手術から回復中だから、ドラムはジョン・テンペスタが叩いたのだけど、どちらのショウにもリック・ヒューノルトが参加して、スーパー・オールドスクールなセットをやって、とても楽しかった。ジョンもリックも古い曲ならよく知っているからね。とても楽しかったけれど、俺はニュー・アルバムの曲をやる準備ができているよ。

 

ー トムの健康状態を心配しているファンは多いです。彼の体調はいかがですか。

 

ゲイリー:とても良いよ。手術は完璧で、少しドラムも叩けるようになっている。胃を摘出したので、新しい体の状態に適応しているところさ。食事をするということが、俺たちとは違う状況なんだ。だけどとても調子は良いし、健康証明書も得ているから、まもなく復帰するよ。

 

ー お気に入りのアルバムを3枚教えてください。

 

ゲイリー:レインボーの『Rising』。UFOの『Strangers in the Night』。それからAC/DCの『Powerage』。もちろん時と共に変わるものだけど、この3枚はずっとお気に入りだよ。

 

ー では最後に日本のファンへのメッセージをお願いします。

 

ゲイリー:日本のファンのみんな、前回から随分と時間が経ってしまっているから、早くまた日本に行きたい。地球上でお気に入りの場所だから、必ずまた行くよ。すっかり時間が経ってしまったし、待ちきれないね。

 

文 川嶋未来

 


 

 

 

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2021年11月19日発売

エクソダス

『ペルソナ・ノン・グラータ』

CD+DVD+Tシャツ

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CD

 

【CD収録曲】

  1. ペルソナ・ノン・グラータ
  2.  R.E.M.F.
  3. スリッピング・イントゥ・マッドネス
  4. エリティスト
  5. プリスクライビング・ホラー
  6. ザ・ビーティングス・ウィル・コンティニュー(アンティル・モラル・インプルーヴス)
  7. ザ・イアーズ・オブ・デス・アンド・ダイイング
  8. クリックベイト
  9. コサ・デル・パンタノ
  10. ルナティック・ライアー・ロード
  11. ザ・ファイアーズ・オブ・ディヴィジョン
  12. アンティシード

ボーナスDVD収録予定曲

01. ジャム・キャンプ

 

【メンバー】
ゲイリー・ホルト(ギター)
トム・ハンティング(ドラムス)
スティーヴ・”ゼトロ”・スーザ(ヴォーカル)
ジャック・ギブソン(ベース)
リー・アルタス(ギター)