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Rings of Saturn

人知を越えた超絶技巧派エイリアン・デスコア・バンド、リングス・オブ・サターンの頭脳 ルーカス・マン独占インタビュー!
『俺はなるべくほかの音楽は聴かないようにしてるんだ。他のメタルバンドとかね』

                                   

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文・取材 川嶋未来 写真クレジット Brian Delumpa

アメリカのスーパー・テクニカル・デスコア・バンド、リングス・オブ・サターン。自らのスタイルを「エイリアン・コア」と呼ぶ宇宙大好きな彼らが、ニュー・アルバム『ジディム』をリリースする。前作『オルトゥ・ウラ』では、メロディックな面が強調され、多くのファンを驚かせたが、ギタリスト、ジョエル・オーマンが復帰した本作においては「バック・トゥ・ルーツ」が明確なテーマとなっている。現在エクストリーム・メタル界最高峰のニュークリア・ブラスト所属の彼らだが、もともとはテクニカル系の総本山、ユニーク・リーダー・レコーズ出身。今回は初心に返り、さらなるテクニカリティ、変態性を極めつくしているのである。日本人最高速シュレッダー陽鬼氏も参加した本作について、ギタリストであり、バンドのリーダーでもあるルーカス・マンに、いろいろと話を聞いてみた。

 

 

ー ニュー・アルバム『ジディム』がリリースになります。以前のアルバムと比べて、どのような内容になっていると言えるでしょう。

 

ルーカス:このアルバムは、俺たちの過去の作品、過去にやった実験の集大成になっていると思う。それこそがファンの好きなものだと思うし、前のギタリストも帰って来たしね。以前のアルバムのヴァイブやフィールを取り戻していると思うよ。新しい驚きもあるけれど。

 

― 今言われたように、ジョエル・オーマンがバンドに復帰しました。

 

ルーカス:彼は何年かバンドを抜けていたけど、彼の書く曲はバンドのスタイルにとても合っているからさ。新しいギタリストが必要になったときに、彼も戻ってきたいというので。彼が戻って来てよかったよ。また一緒に曲作りをできてうれしいよ。

 

― そもそも彼がバンドを脱退した原因は何だったのでしょう。

 

ルーカス:うーん、それは彼に直接聞いてもらったほうがいいな。彼は自発的に辞めたので、残念ながら彼の代わりに俺はこの質問には答えられない。重要なことは彼が戻って来たということさ。そして、彼が戻って来たがったということ。

 

― 前作『オルトゥ・ウラ』では、よりメロディックな方向性を目指していましたよね。

 

ルーカス:あのアルバムでは、俺たちはいろいろと新しいことに挑戦した。リングス・オブ・サターンを作ったサウンドにフォーカスしていなくて、ファンはそういうサウンドを恋しがっていたようだ。クレイジーでテクニカルで実験的なサウンドをね。これらによってバンドは成功をしたわけだからさ。今回はこういう要素に立ち返って、さらにそこを発展させていくということにしたのさ。

 

― 前作の出来にはあまり満足していないということでしょうか。

 

ルーカス:いや、そんなことはないよ。気に入ってくれたファンも多いし、そのことについてはハッピーに思ってる。アルバムとしても成功だったと思う。だけど、さっき言ったみたいな要素を恋しがるファンも少なくなかったからね。

 

 

ー ニュー・アルバムのタイトル、『Gidim』というのはどのように発音するのですか。

 

ルーカス:”J”みたいな感じ、『ジディム』だよ。

 

― これはどういう意味なのですか。

 

ルーカス:シュメール語で、「幽霊」のことなんだ。以前のアルバムでもタイトルにシュメール語を使ってきたけど、人類の歴史において、初めてエイリアンに言及した言語がシュメール語だからなんだ。この古い幽霊をタイトルにしたのは、この幽霊というのはビッグバンで宇宙を作ったと考えられていたから。アルバム・カバーのロゴも、ビッグバンを表している。つまり、これはすべての始まりということ。今回の作品が、バック・トゥ・ルーツ的なものであることも示している。アートワークには、過去のアルバムのキャラクターも散りばめられているしね。過去10年、そして現在のリングスが全部詰まっているんだ。

 

― 歌詞のコンセプトはどのようなものなのでしょう。歌詞をすべて読みましたが、非常に抽象的で、正直ほぼ意味がわからなかったのですが...。

 

ルーカス:それについては、俺はコメントできないな。ヴォーカルのイアンが歌詞はすべて書いているからね。音楽は全部俺の手によるものだけど。ベースもシンセのアレンジメントもね。ちなみにドラムはロード・マルコがゲスト・ドラマーとしてすべて叩いている。申し訳ないけど、歌詞についてはコメントできないよ。

 

― 日本人ギタリスト、陽鬼氏がゲスト参加していますね。

 

ルーカス:彼は素晴らしいゲスト・ソロを弾いてくれたよ。

 

― 彼とはどのように知り合ったのですか。

 

ルーカス:彼はリングス・オブ・サターンのファンでね。インターネット上で、彼がリングスのカバーをやっているのを見つけたんだよ。彼のことは3−4年前から知っているのだけど、本当に素晴らしいギタリストだ。もし素晴らしい、まだ世に知られていない速弾きギタリストが必要になったら連絡をしようと思っていたのだけど、俺が一時期ツアーに出られなくてね。代わりに弾いてくれるか彼に聞いてみたら、とても乗り気だった。素晴らしい仕事をしてくれたよ。ステージではインプロヴィゼーションも取り入れて。おそらく俺が知ってる中で、一番才能があるギタリストじゃないかな。だから、アルバムでもゲストとして参加してもらったんだ。

 

― リングス・オブ・サターンのような複雑な楽曲を、どうやって他のメンバーに教えるのですか。スコアを書くのでしょうか。

 

ルーカス:スコアというか、ギターのタブ譜にして渡すんだ。インターネットの時代だからね、離れたところにいるメンバーとバンドをやるというのも難しくはないよ。俺たちのメンバーも、みんなアメリカの違った州に住んでいるし。曲を書くときも、曲とタブ、ビデオを送りあってという形でやる。ドラムはライヴでもクリックを聴きながら叩くからね。それぞれが個人で練習して、最後にみんなで集まって合わせる。これでうまくいくんだよ。

 

 

― 曲作りに音楽理論は使っているのでしょうか。

 

ルーカス:面白いのは、リングス・オブ・サターンで使われている音楽理論というのは、俺が作った人工的なスケールやアルペジオとか、ディミニッシュやホールトーン、オーグメント、ハーモニック・マイナーとか、いわゆる普通のものではないものを多用しているということ。俺の意見としては、音楽理論というのは人を箱の中に閉じ込めてしまうものだからね。みんなと同じスケール、同じモード。そういうのには飽き飽きだから、俺は自分自身のものを作り上げているんだ。リングスの音楽を一まとめにするホッチキスのようなものとしてね。曲を書くときは、バンドのみんなが同じ形式、フレーズ、スケール、アルペジオ使うんだよ。リングスの様式として。音楽理論も自分で一通り勉強した。俺はギターも独学なんだよ。インターネットのおかげで、テクニックも理論も学べたからね。かつては、俺も音楽理論内の曲をいろいろと書いていた。だけど、どうにもならなかった。ほかの人たちと同じような曲にしかならなかったから。そこから脱却して、自分自身のことをやる必要があったのさ。そのおかげで、今はみんなに俺の曲を楽しんでもらえているようだ。

 

― あのギターが独学というのは凄いですね。楽器はきちんと習ったほうがいいという人もいますが、あなたのお考えはどうでしょう。

 

ルーカス:本当の初心者にとっては、レッスンも有益かもしれない。ギターの構え方とか、とても基本的なことに関してはね。みんなが要領が良いというわけではないだろうから、レッスンに行ってコツを教えてもらうというのは良いかもしれない。俺は、とにかくいろいろなことが知りたくてうずうずしていたから、やらなくてはいけないことを全部自分でやれた。人によるんじゃないかな。レッスンを受けて、プランを決めてもらうほうがいい人もいるだろう。インターネットでレッスンも受けられるしね。今はレッスンを受けるのがすごく簡単になっているから。いくらでも手段がある。以前は教室に行くしかなかっただろ。今ではYouTubeを見れば、素晴らしい速弾きギタリストを見られる。インターネット以前は、速弾きなんていうものがあることすらわからなかったのに(笑)。誰かがアルバムを貸してくれるまではね。まあ、とにかくレッスンというものはますます必要なものではなくなってきていると思うよ。

 

「パスチュールズ [feat. チャールズ・キャスウェル | ベリード・アライヴ]」OFFICIAL GUITAR PLAYTHROUGH

「メンタル・プロラプス」OFFICIAL GUITAR PLAYTHROUGH

― あなたもインターネットでギターを学んだのですか。

 

ルーカス:ほとんどインターネットだね。中学のころは、夜通しギターを弾いていたものさ。それで授業中はほとんど寝ていたよ。学校では良い生徒だったんだ。学校の授業は簡単だったから。俺の興味の対象は音楽だったからさ。正直言うと、音楽というよりテクニック。さっきも言ったとおり理論は音楽を同じにしてしまうから。ダイアトニック・スケールを、弾ける限りの速さで弾いたり。他のギタリストからクレイジーだと言われるような方向へと向かっていった。とても面白かったよ。テクニカルな面をとにかく磨いたんだ。

 

― 最近のギタリストは、かつてに比べ技術が非常に向上していると思うのですが。

 

ルーカス:その通りだね。知識というのは蓄積していくものだから。最初のジェネレーションは、ただそのこと自体について発見をする。ところか何世代かあとになると、彼らはそれ以前に存在したバンドのことをすべて知っている。今のギタリストだと、例えば、そうだな、ジェフ・ルーミスあたりからスタートできるわけだよ。とてもとても進んだ状態からスタートできるのさ。ずっと前は、最初にお手本にしたのは、そうだな、多分ブラック・サバスとかだっただろう。もちろん彼らの音楽は素晴らしいけれども、テクニック的に難しいものではないよね。難しいところからスタートすれば、さらに進歩する余地があるということさ。

 

― リングス・オブ・サターンの曲を書くにおいて一番大事なことはなんでしょう。テクニック至上主義に陥らないよう気を付けていることはありますか。

 

ルーカス:大切なのは、繰り返しだよ。仮に無調の曲であっても、繰り返しというのは大切だ。超メロディックな、耳に心地よいものでなくて、かつ頭に残るようにするためには、繰り返しを作らないと。スイープのセクションについても、ただむやみやたらにやるという訳にはいかない。やっぱり繰り返しを作らないとね。あ、これはさっき聞いたな、と思うことで頭に残るんだ。頭に残らなければ、いくらテクニック的に優れていても、何の意味もないから。ものすごくテクニカルで、一切の繰り返しがないバンドというのも聴いたことがあるけれど、リングスはそうじゃない。繰り返しも多くて、ヴァースがあってサビがあって。曲の構成というのが大切なのさ。

 

 

― リングスの音楽はどのようなアーティスト、ジャンルから影響を受けたのでしょう。

 

ルーカス:俺はなるべくほかの音楽は聴かないようにしてるんだ。他のメタルバンドとかね。意識的であれ、無意識であれ、聴いたものからはどうしても影響を受けてしまうから。俺はもっと他のところからインスピレーションを受けるようにしている。自分自身とか。俺は常に自分自身へのハードルをあげるようにしているんだ。ビデオゲームのサウンドトラックには素晴らしいオーケストレーションがたくさんある。映画なども見るけど、これは主にエイリアンとか、コンセプトのリサーチのためだね。

 

― 個人的にはどのような音楽を聴くのですか。

 

ルーカス:まあ、ほとんどはゲームのサウンドトラックだよ。エレクトロ・ミュージックとか。メタルはたいていギターとベース、ドラムが同じフレーズを演奏しているだろ。唯一ヴォーカルのフレージングは違うけれど。サウンドトラックを聴くと、カウンターメロディやカウンターハーモニーがあったりとか。非常にたくさんの楽器のレイヤーが存在していて、とても刺激を受けるよ。

 

― リングス・オブ・サターンの音楽を、無理やりにでもカテゴライズするとどうなりますか。

 

ルーカス:名前を与えるとしたら、テクニカル・デスコアかな。エイリアン・コアという名前も考えたんだけど、これはメタルのジャンルが細分化しすぎていることへのジョークというか。だけど、多くの人がエイリアン・コアという言葉を使ってくれているけどね。俺たちはジャンルというものをあまりシリアスには捉えてないよ。

 

「ザ・ハスク」MV

― メタルをプレイしているという意識はあるのですか。

 

ルーカス:あるよ。メタルのエクストリーム・バージョンさ。

 

― では最後に、日本のファンへのメッセージをお願いします。

 

ルーカス:日本のファンのみんな、リングス・オブ・サターンはニュー・アルバム『ジディム』をリリースする。俺たちの最高傑作だよ。ぜひ日本に行ってプレイしたいね。

 

文・取材  川嶋未来

写真クレジット

 

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10月25日発売

リングス・オブ・サターン『ジディム』

【CD】 GQCS-90789 / 4582546590369 / ¥2,500+税

【日本語解説書封入/歌詞対訳付き】

 

【CD収録曲】

  1. パスチュールズ [feat. チャールズ・キャスウェル | ベリード・アライヴ]
  2. ディヴァイン・オーソリティ
  3. ハイポダーミス・グリッチ [feat. ダン・ワトソン | エンタープライズ・アース]
  4. ブローテッド・アンド・スティフ
  5. トーメンテッド・コンシャスネス [feat. 陽鬼]
  6. ザ・ハスク
  7. メンタル・プロラプス
  8. ジェネティック・インヘリタンス
  9. フェイス・オブ・ザ・ウォームホール
  10. ジディム [インストゥルメンタル]

 

【メンバー】

ルーカス・マン(ギター/ベース/シンセサイザー)

ジョエル・オーマンズ(ギター)

イアン・ベアラ(ヴォーカル)

マルコ・ピトルゼッラ(セッション・ドラムス)

 

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