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幅広いジャンルを好む音楽フリーク
トラヴィス・ライアン(キャトル・ディキャピテイション)来日インタビュー

『高円寺百景は本当に大好きだ。メルツバウもいいね。ポップスやラップ、ヒップホップも大好きだよ。
だけどスカだけは嫌い』

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文:川嶋未来 写真:Alex Solca

 昨年リリースした『デス・アトラス』も大評判のキャトル・ディキャピテイションが再来日。凄まじい高速ブラストビート、そして変幻自在のヴォーカルで、集まったエクストリーム・メタル・ファンを圧倒してみせた。東京公演の2晩目、リーダーでヴォーカリストのトラヴィス・ライアンに話を聞いてみた。

 

 

― 昨晩のショウはいかがでしたか。

 

トラヴィス:最高だったよ。日本では確か一年半前くらいにザ・ブラック・ダリア・マーダーと一緒にプレイしたけど、昨晩も素晴らしいショウになった。今回は東京で2晩連続でのプレイだからね。どうなるかわからないということもあったけど、とても楽しみにしていたよ。

 

― 今世界の状況がおかしなことになっていますしね。

 

トラヴィス:(笑)。本当にクレイジーだよね。実は俺たちも、アメリカに戻って検疫で2週間足止めなんていうことにならなければいいなと心配しているんだけど(笑)。マスクがまったく見つからないんだよ。全部売り切れで。

 

― そうなんですよ。今はどういうわけかトイレットペーパーなども売り切れていて。

 

トラヴィス:ついさっきそのニュースを読んだところさ。

 

 

― ニュー・アルバム『デス・アトラス』の評判はいかがですか。

 

トラヴィス:とても良いよ。どの国でも気に入ってもらえてるようだし、もちろん『Monolith of Inhumanity』から逃れられないファンも多いみたいだけど(笑)。でも、新しいアルバムの評判もとても良かったし、これは俺のお気に入りの作品でもあるよ。ヨーロッパや日本用のボーナストラックも興味深いものだったしね。仕上がりにはとてもとても満足している。

 

 

― キャトル・ディキャピテイションの音楽性は非常に幅広いものですが、音楽的バックグラウンドはどのようなものなのですか。

 

トラヴィス:俺は個人的には本当に色々な音楽を聴いている。デイヴはパワー・メタルが大好きだし。

 

― パワー・メタルですか?

 

トラヴィス:そうなんだよ(笑)。彼はパワー・メタル・フリークなんだ。ジョッシュはブラック・メタルが好きだし、ベルは2人の中間というか、デイヴと同じようなものも好きだし、テクニカル・デス・メタルの専門家でもある。これらが合わさって、俺たちが今やっていること、他とは違うことになっているんだ。創意工夫をして違うことをやり、かつファンにとっても意味のあるものをやっているのさ。ファンを置き去りにして、ただ変なものを作るんじゃなくてね(笑)。『デス・アトラス』も、「これはまったくの別物だな」というものにならない範囲でやった。新しいことを試して、自分自身をハッピーにする。俺ももう45だけど、作品をアーティスティックに保ち続けたいしね。今回曲はもっとキャッチ―でメロディックにして、俺は「丸い穴に四角い杭」(=場違いなもの)と言ってるんだけど、エクストリーム・ミュージックに誰も考えつかなかったような要素を持ち込みたいんだ。エクストリームな音楽というのは、すなわちエクストリームであるべきだから。俺たちの音楽には、美しくてのどかなパートもあれば、もちろんクレイジーで激しいところもあるのさ。

 

 

― エクストリームな音楽との出会いはどのようなものだったのですか。

 

トラヴィス:俺は本当に色んな音楽を聴くけど、いつもあるのは、もっと激しいものを聴きたいという欲求だった。『Master of Puppets』のパーム・ミュート・ギターを聴いて、「こういうのをもっと聴きたい」と思ったんだ。それで色々なレコードを漁ってね。ニュークリア・アソルトみたいなもっとヘヴィで速いスラッシュとか。俺はハイパーアクティヴだからさ。見ていればわかると思うけど(笑)。もっとクレイジーで激しいものを聴きたいという欲求は、俺のDNAに刻まれてるんだ。音楽的にであれ、フィーリング的にであれ、アンビエントのような方向であれね。俺はアンビエントも聴く。ショウの前にも、思い切り大声を出したりする一方、静かにする時間もある。「嵐の前の静けさ」だよ。

 

― 今アンビエントが挙がりましたが、メタルではないものだと、どのようなものから影響を受けているのでしょう。

 

トラヴィス:オー・ゴッド!俺の大好きなバンドの1つなんだけど、そのバンドはこのライヴハウス(高円寺HIGH)でやったライヴのDVDを出してるんだ。高円寺百景さ。このバンドは本当に大好きだ。今日ここでプレイすると聞いたときは、とても不思議な気持ちになった。最高にクールだよ。彼らはマグマからインスパイアされてるよね。マグマは最も好きなバンドの1つなんだ。彼らは類似のバンドを多く生み出したけど、日本にもそういうバンドがいくつかいるだろ。ルインズとか。吉田達也。最高だよ。高円寺百景の最新作を何とかして手にいれたいんだけどね。この辺にレコード屋さんはある?あれはキックスターターか何かを利用して作られたから、もともとUSD60くらいして、結局買えなかった。今はさらに値上がりして、USD100とか払わなくてはいけなくなってしまって(笑)。

 

― あることはあります。ここも昔はたくさんのレコード屋さんがあったのですが。

 

トラヴィス:昨日ディスク・ユニオンには行ったんだ。持ってないマグマの作品がいっぱいあったよ。

 

― ブートなども含めると、マグマをコンプリートするのは至難の業ですよね。

 

トラヴィス:そうなんだよ。彼らは68年くらいから活動しているし。

 

― マグマの新作聴きました?良かったですよね。

 

トラヴィス:良かったね。オリジナルのフォーミュラに戻ったというか。ファンはそれを望んでいるとわかったんだろうね。

 

 

― ところで「キャトル・ディキャピテイション」というバンド名には、どのような意味が込められているのですか。

 

トラヴィス:The Locustに「Cattle Mutilation」という曲があって、オリジナル・メンバーのドラムがそれを一単語変えてキャトル・ディキャピテイションとしたんだ。(訳注:キャトル・ディキャピテイションのオリジナル・メンバー、Gabe Serbianは、The Locustのメンバーでもある。)俺はその数か月後に加入して、バンド名を変えようと考えてはいたんだけど、結局そのままになってしまったんだよ(笑)。当時はただ30秒のグラインド・ソングをやっていただけで、ここまで来るなんて予想もしていなかったのさ。

 

― 動物愛護であるとか、ポリティカルな意味はないのですか?

 

トラヴィス:90年代終わりから00年代初めに、カーカスのクローンが流行っただろ。エグジュームド、インペイルド、ザ・カウンティ・メディカル・エグザミナー、ジェネラル・サージェリーとか。俺たちもそんな感じだったんだ。カーカスのクローンというアングルだったんだよ。すぐに方向性は変わったけどね。結局カーカスみたいなものはまったくリリースしなかった。でもルーツはそこなんだ。イマジネーションの欠如というか(笑)。その後20数年は実にイマジネーションに富んだことをやってきているにもかかわらずね。

 

― 「キャトル・ミューティレイション」というと、UFOやエイリアンがらみで使われる言葉ですよね。

 

トラヴィス:(爆笑)。実はファーストEPに入っている「Mute Rain」という曲は、空から降ってきたと思われる牛についてなんだ。何でそんなことが起こりうるのかはわからない。エイリアンが検査をして、その後空から捨てたとしか考えられない(笑)。竜巻かもしれないけど。でもUFOやエイリアンというアングルではないよ。カーカスみたいに全員がヴェジタリアンのバンドになろうとしていたんだ。当時カーカスが解散して、その跡を引き継ごうとしたバンドがたくさん出てきた。俺たちもその中の1つだったんだよ。特にヴェジタリアンという点においてね。

 

― ヴェジタリアンだと日本で食事に苦労しませんか。

 

トラヴィス:そうだな、食べたいものを見つけるのは難しい。だけど昨日、パーフェクトなラーメン屋を見つけたよ。ヴィ―ガン寿司も見つけたかったんだけどね。あのラーメンは良かった。ライヴハウスの近くにあって。

 

― ヴェジタリアン用のラーメンだったのですか?

 

トラヴィス:そう。普通スープは鳥や魚だろ?だけどそこは、野菜がベースのスープなんだ。とてもおいしかったよ。

 

 

― 今の世界情勢をどう見ますか。世の中おかしくなっていると思いますか。

 

トラヴィス:うーん、人々は社会の問題に気づき始めていると思うよ。いまだに良い状況ではないと思うけど、政治家はもっと科学者の意見を聞くべきだと思う。宗教家も科学者の意見に耳を傾けるべきさ。

 

― バンドの今後の予定はいかがでしょう。

 

トラヴィス:ツアーをやりまくるよ。この時期に日本、オーストラリア、ニュージーランドに来られて良かったよ。この時期にアメリカやヨーロッパを回るのは危険なんだ。寒すぎてね。どこも雪が積もっているから、その中を車で移動するのは危険すぎる。しかしこの時期に何もできないというのもね。アルバムは11月に出たから、春までツアーを待っていたら、すべてが台無しになってしまう。アルバムが出てツアーをやって、その後オフが少しあったから。22年バンドをやっているし、日本にも必ず来たかった。この手のバンドにとっては、簡単に来られるテリトリーではないからね。

 

― お気に入りのアルバムを3枚教えてください。

 

トラヴィス:カーカスの『Symphonies of Sickness』。U2の『Joshua Tree』(爆笑)。

 

― あれは良いアルバムですよね。

 

トラヴィス:そうだよ、あれは本当に画期的なアルバムさ!ブライアン・イーノとダニエル・ラノワのプロデュースで。これらは俺が子供のころにインパクトを受けたアルバムだけどね。あとはザ・キュアの『Kiss Me Kiss Me Kiss Me』と『Disintegration』。素晴らしい作品だよ。この辺はどれも大好きなマグマとは関係ないけどね。だけど、これらの作品が俺の頭の中の音楽形成に寄与したのさ。このあたりが俺にとってとても重要なレコードだよ。

 

 

― エクスペリメンタルなものだとどうでしょう。

 

トラヴィス:俺はDamion Romeroというアーティストが大好きなんだ。彼はロサンジェルスでSpeculum Fightというプロジェクトをやっていてね。彼の作品は、音を出すインスタレーションのようなものなんだ。巨大な磁石とかね。サウンドはほとんどドローンなのだけど、とても魅力的だ。Thomas Könerというアーティストも大好き。彼は孤独というものを研究して、それを音で表現したりしている。だから、サブハーモニックのようなフリークエンシーが多用されているんだ。本当にクールだよ。あとはメルツバウもいいね。一番お気に入りのメルツバウの作品は、実はそのスプリットのもう1つのアーティストのおかげなのだけど。ドイツのベッドルーム・プロジェクト、レディバードとのスプリット、というか、片方のチャンネルがレディバードで、反対がメルツバウという作品。レディバードの方は、ポップスのローファイ・カバーというか、インディ・ロックのグループがカバーしたみたいな、タスカムの4チャンネルでとったみたいなやつなんだけど、俺はそれが大好きなんだよ(笑)。もちろんメルツバウの方もクールなんだけど、20年くらい前、友人にわざわざレディバード側だけを取り出してもらってね。単独で聴けるようにしてもらったんだ(笑)。最高だよ。俺はポップスやラップ、ヒップホップも大好きだよ。だけどスカだけは嫌い。あとメインストリームのカントリーも。カントリー自体は好きなんだけどね。メインストリームのは好きじゃない。

 

― アウトローなカントリーがお好きなんですか。

 

トラヴィス:古いやつは好きなんだよ。古いサザン・ブルースのミュージシャンみたいに、ポーチに座って演奏するようなやつ。だけどスカだけは我慢できない。

 

― レゲエは?

 

トラヴィス:レゲエやダブは大好き。お気に入りのレゲエ・シンガーはホーラス・アンディだよ。とても美しい高い声の持ち主だよね。俺は高い声のヴォーカルが好きなんだ。俺も声が高い方だからね。低いガテラルもやるけど、あれはテクニックが必要なんだ。俺は体が大きいタイプじゃないから。

 

― では最後に日本のファンへのメッセージをお願いします。

 

トラヴィス:ニュー・アルバムを買ってくれ(笑)。買ってくれればまた日本に来ることができる。ぜひまた日本には来たいな。ショウに来てくれた人たち、どうもありがとう。また会おう。

 

文 川嶋未来

写真 Alex Solca

 


2019年11月29日発売

最新スタジオ・アルバム

キャトル・ディキャピテイション『デス・アトラス』

【CD】 ¥2,500+税

【日本語解説書封入/歌詞対訳付き】

 

【CD収録予定曲】

01. アンスロポジェニック:エンド・トランスミッション
02. ザ・ジオサイド
03. ビー・スティル・アワ・ブリーディング・ハーツ
04. ヴァルチャラス
05. ザ・グレイト・ダイング
06. ワン・デイ・クローサー・トゥ・ジ・エンド・オブ・ザ・ワールド
07. ブリング・バック・ザ・プレイグ
08. アブソリュート・デスティテュート
09. ザ・グレイト・ダイングⅡ
10. フィニッシュ・ゼム
11. ウィズ・オール・ディスリスペクト
12. タイムズ・クルーエル・カーテン
13. ジ・アンイレイサブル・パスト
14. デス・アトラス
《ボーナストラック》
15. アン・エクストリーム・インディファレンス・トゥ・ヒューマン・ライフ

 

【メンバー】

トラヴィス・ライアン(ヴォーカル)
ジョシュ・エルモア(ギター)
ベリサリオ・ディムジオ(ギター)
オリヴィエ・ピナール(ベース)
デイヴ・マグロウ(ドラムス)

 

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