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EVIL INVADERS

ジョー『ステージセットは、すべて俺たちの手作りだ。ロゴがくるくるまわるマイクスタンドとかさ』

                                   

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文・取材  川嶋未来

新世代スピード/スラッシュ・メタル・バンドの代表格、ベルギーのイーヴル・インヴェイダーズ。スラッシュ・メタルという伝統芸となりつつジャンルにおいて、その枠組みを守りながらもオリジナリティを見せるという難題を見事にクリアしてみせている稀有な存在だ。デス・メタルからプログレッシヴ・メタル、さらにはドゥーム・メタルまでも飲み込んで、イーヴル・インヴェイダーズの色に染めてみせたセカンド・アルバム、『フィード・ミー・ヴァイオレンス』(17年)も記憶に新しい。

しかし、やはりスラッシュ・メタルの本領発揮はライヴ!ということで、ライヴ映像作品『サージ・オブ・インサニティ:ライヴ・イン・アントワープ2018』がリリースされることとなった。イーヴル・インヴェイダーズの地元ベルギーの、しかも彼らが子供のころから通い慣れたライヴハウスに、通常はフェスでしか使用しないステージセットを持ち込んでの収録。現時点における彼らの最高のステージングを体験できる内容に仕上がっている。これで興奮しなきゃスラッシュ・ファンじゃない!ということで、リーダーでギター・ヴォーカル担当の、ジョーに話を聞いてみた。

 

 

― ライヴ作品をリリースしようと思ったきっかけは何なのでしょう。アルバム2枚でライヴを出すというのは、最近のエクストリーム界では珍しいことのように思うのですが。

 

ジョー:ファンから「君たちの音楽が大好きだ。レコードも最高だよ。だけどライヴを見られたらもっとアドレナリンが出るだろうな」なんて言われるんだ。ライヴを見たファンも、「最高にクールだったよ。凄いエネルギーだし、レコードよりもさらにずっと激しくて」と言ってくれる。だから、ライヴ盤を出してみようと思ったのさ。フェスティヴァルでもないと、なかなかフルセットを並べたショウを見せられないし、ライティングなども俺たちにとっては重要な要素なんだ。マイクスタンドとかさ。(こういうものが全部揃った)ライヴをファンに見せるというのは、とても大事だと思ったんだよ。きちんと音楽をチェックせずに、俺たちのことを平均的なスラッシュ・バンドだと思っているやつらもいまだに多いし。俺たちは普通のスラッシュ・バンドとは違うんだということを示したかった。俺たちの音楽にはヘヴィメタルやスピード・メタルの要素も入っている、ユニークなバンドだからね。

 

― 本作は地元での収録とのことですが、やはり地元でのライヴは違うものでしょうか。

 

ジョー:ベルギーというのはとても小さい国だから、国内のどこでやってもホームショウみたいになる。今回これを収録したところは、ベルギーの代表的なヘヴィメタル用のライヴハウスで、俺もしょっちゅう通っていたんだ。オビチュアリーも見たし、ナパーム・デス、アイスド・アースやメガデスとかも見た。子供の頃大好きで、今でも好きなバンドを色々見たのさ。エクソダスも見たな。だから、そこでプレイをしてビデオまで収録するというのは、特別なことだったよ。あのライヴハウスは大好きなんだ。サウンドも素晴らしいし、ステージも広いし。ベルギーではみんなが知ってるライヴハウスだからね。

 

― かなりたくさんのお客さんが入っているようでしたが、どのくらい集まったのでしょう。

 

ジョー:どうだろう、俺はそういうのを把握するのが苦手なんだけど、多分650人くらいじゃないかな。

 

― なるほど。やはりベルギーではスラッシュ・メタルは人気があるのでしょうか。

 

ジョー:ベルギーでは、イーヴル・インヴェイダーズはとても良い状況なんだ。ありがたいことにね。このライヴハウスのキャパは900とかだから、ソールドアウトはしなかったんだけど、あれだけ埋まれば良いショウになるよ。とても盛り上がったし、すごく楽しかった。ベルギーではスラッシュ・メタルはあまりビッグだとは思わないな。オランダやドイツのほうが、スラッシュ・メタル好きが多いように感じる。ベルギーはスラッシュだけというファンは少なくて、どんなジャンルも聴くというやつが多いんだ。まあ、それでもショウに来てくれるわけだから、クールだけど。

 

 

― 他のスラッシュ・バンドのライヴと比べた場合、イーヴル・インヴェイダーズはどんなところが異なると思いますか。

 

ジョー:ステージにおけるエネルギー。ステージのレイアウトなんかは、ほとんどのバンドと違っていると思う。ステージセットは、すべて俺たちの手作りによるものだから、同じものを持っているバンドもいないしね。ロゴがくるくるまわるマイクスタンドとかさ。見た?

 

― 見ました

 

ジョー:あれはとてもユニークだろ?過去にああいうことをやったバンドはいないよ。何しろ俺たちの手作りだからね。

 

― そうなんですか!

 

ジョー:そうだよ。大変だったけどね。デザインしてあれを作るのは大変だったけど、ああいうことが得意な友達に、溶接とかを手伝ってもらってさ(笑)。楽しいよ。

 

― ベーシストがレインボーのTシャツを着ているのも印象的でした。

 

ジョー:そうなんだよ(笑)。俺たちはスラッシュだけを聴いてるわけではないからね。クラシック・ロックからデス・メタルまで、たくさん聴いているから、色々なものから影響を受けているのさ。速い曲もあって、遅い曲もある。クリーンなイントロがある曲もある。プログレッシヴなものもあれば、もっとヘヴィメタルらしいものもある。そしてもちろんスラッシーなものがあって、このバンドのこういうところがとても気に入っているんだ。いつも同じことをやるのではなく、アルバムごと、曲ごとに違いがあってさ。もちろんどれもイーヴル・インヴェイダーズらしいものではあるけれど、違いをつけることで、より興味深いものになっているんだよ。

 

 

― あなたの風貌が、トム G.ウォリアーを思わせる部分があったのですが。

 

ジョー:(爆笑)。それは君の個人的見解だよ(笑)。俺はあんまりセルティック・フロストは聴かないんだ。もう一人のギタリストのマックスは、セルティック・フロストの大ファンなのだけど。

 

― ホームタウンでのライヴにもかかわらず、MCは英語ですね。

 

ジョー:俺としては英語の方がやりやすいんだよ。オランダ語で喋るよりね。歌詞もすべて英語だし、ステージでは別人という感覚もあるから。俺の別の面が出ているというのかな。ステージに上がっていると、完全に入り込んでいて、曲間にもそこから抜け出すのは容易ではないんだ。音楽のヴァイブを殺してしまうことになりかねないし。だから、ステージではオーディエンスにもバンドのメンバーにも英語で話しかけるようにしている。そもそもマックスはドイツ人だし。

 

― ベルギーはフランス語やドイツ語も公用語という事情もあるのかと思ったのですが。

 

ジョー:そう、それもある。英語というのは国際的な言語だからね。俺たちのライヴには、ドイツから来てくれるファンもいるし、ワロン地域の人々はフランス語を話すし。英語ならばみんなが理解してくれるだろ。みんなに俺が言っていることを理解して欲しいからね。メッセージを伝えるためにさ。

 

 

― ヴェノムの「ウィッチング・アワー」をカバーしていますが、この曲を選んだ理由は何でしょう。

ジョー:まず、マックスがヴォーカルをとれる曲をやりたいというのがあった。セットリストに変化をつけるためにもね。俺がずっと歌っているのではなく、違う声が聞ける瞬間があった方が良いと思って。それに俺たちはみんなヴェノムのファンだし、あの曲はとてもエネルギッシュでシンプルだから。こういうストレートな曲は、ライヴでとても効果的なんだよ。(エキサイターの)「Violence and Force」のカバーもやっていたけど、あれもとてもストレートな曲だよね。ああいう曲は、知らなくてもすぐに一緒に歌えるようになるからさ。ツーバスも非常にパワフルだし。

 

― 過去には他にどんなカバーをやったのですか。

 

ジョー:エクソダスの「Fabulous Disaster」とか、他には何をやってたからな。色々やってたんだよ。はじめのころは「Angel Witch」もやってた。

 

― イーヴル・インヴェイダーズは1stと2ndでかなり曲調が異なっていますが、バラエティに富んだ楽曲を続けて演奏しても一貫性が感じられるのが印象的でした。

 

ジョー:その通りだね。まあ、結局演奏してるのは全部俺たちだからさ(笑)。同じ人間が歌って演奏していれば、同じような感じになるものだよ。カバーをやろうがオリジナルをやろうがね。そうそう、カバーで思い出したけど、「Broken Dream in Isolation」の7”EPのB面では、サヴァタージをやったよ。「The Unholy」。これも一つの試みだったんだ。サヴァタージは俺たちがやっていることとは違うジャンルに属しているバンドだよね。そういう曲をカバーするのは、初めはとても大変だけれども、うまくやれればそこから学ぶことは多いのさ。

 

― やはり曲順には気を使いますか。

 

ジョー:もちろん。少なくとも俺にとっては、まずすぐに人の心に火をつけるスピードの曲からスタートすることが大切さ(笑)。そして中盤では、遅めの曲で多少ブレイクを作って、それから再びスピードアップする。セットリストにヴァリエーションがあるということはとても大切なことだよ。最初に速い曲ばかり演奏して、終盤遅くなると、みんな寝てしまう。かといって、ずっと速い曲ばかりやっていると、中盤でオーディエンスは飽きてしまう。だから正しい曲順で演奏するというのはとても重要なんだ。それはアルバムでも同じこと。前回のアルバムでは、3種類の曲順を考えて、それを何度も聴いて、どれが一番飽きずに聴けるかを確認したんだ。速い曲、ミッドテンポの曲、遅い曲を正しく配置しなくてはいけないのさ。

 

― スタジオとライヴは違いますか。どちらの方が大切というのはあるのでしょうか。

 

ジョー:うーん、それは難しい質問だな。俺はまとめて作業するのが好きなタイプなんだ。ツアーをしているときは、ライヴのことばかりを考えて、逆にスタジオの作業をしているときは、ライヴのことは考えず、レコーディングのことだけを考えて最善の結果を得るように努めているからね。どちらもバンドにとっては重要なものだし、新曲がなければライヴもやれない。難しいね(笑)。アルバム作りはとても大事だよ。いつも時間をかけて曲も何度も作り直して、プリプロもじっくりやる。パーフェクトな内容になるようにね。アルバムでは、ライヴで再現できないようなパートを付け加えることもあるよ。3本以上ギターを入れたりとか。でもそれが悪いとは思わないよ。おそらくライヴでも3本目のギターがないことを誰も気にしないだろうし、ギター2本でもライヴで十分良く聞こえるのなら、レコーディング時に3本目を加えるのもアリさ。

 

 

― お気に入りのスラッシュ・メタルのライヴ・アルバムはありますか。

 

ジョー:『Another Lesson in Violence』だね、エクソダスの。あれは本当にパワフルだし、ポール・ベイロフが『Pleasures of the Flesh』の曲を歌うのが聴けるのも素晴らしい。これを聴くと、『Pleasures of the Flesh』が、ポールが歌うことを想定して作られていたということがはっきりわかるよ。「Seeds of Hate」なんかはアルバムと歌詞も違うし。それにあのアルバムでは、ゼトロはまだエクソダス用の声を探っている感じがするしね。ベイロフみたいに歌おうとしているというか。このライヴでは、ベイロフが歌うと「Holy shit!」という感じで本当にブルータルだろ(笑)。凄いパワフルだし、MCも最高に面白いし(笑)。

 

― このライヴが出たときに、やっとエクソダスもポールが優れたヴォーカリストだと認めたのだと思いましたよ。

 

ジョー:まあ俺は、ゼトロも大好きなんだけどね。『Tempo of the Damned』でのパフォーマンスは最高だよ。だけど、ベイロフのああいうライヴパフォーマンスを聴いちゃうとね。もちろん彼は、技術的に優れがシンガーでなかったけれど、彼が持つ生々しいエネルギーは凄いよね(笑)。狂暴すぎるよ(笑)

 

― そんなポールもエクソダスをクビになったあとに、ヴォイストレーニングに通っていたなんていう話もあります。

 

ジョー:そうなんだ(笑)。

 

― 最近はどんなバンドを聴いていますか。何か面白いバンドはいましたでしょうか。

 

ジョー:最近のバンドを気に入ることはあまりないんだ。どうしても古いバンドと比べてしまって、実際古いバンドのほうが才能があるし。だけど、Idle Handsはとても気に入っているよ。アメリカのヘヴィメタル・バンドで、Keep It Trueで見てブッとんだ。その前に音源をチェックはしてみたのだけど、そのときはピンとこなかったのだけど、ライヴを見たら凄くてさ。彼らは最近のバンドの中では間違いなくベストの1つだよ。感情のない、ゴシックっぽいヴォーカルのヴァイブを80年代スタイルのギターワークに混ぜた、とてもユニークなスタイルをやっている。とてもダークでヘヴィだけど、同時にポップでもある。ビッグになる可能性があるバンドだと思うよ。

 

― サード・アルバムについてはいかがでしょう。具体的な製作予定はありますか。

 

ジョー:今、新しい曲を書いているところさ。先月からアイデアを交換したり、デモを作ったりしている。だんだんと形になってきているよ。バッキングはだいぶできてきていて、今はヴォーカルラインを考えたり。俺はこれに関しては完璧主義者なところがあるから、大変なんだよ。

 

― 音楽的な方向性はどうなりますか。以前の2枚とは違う作風になりますか。

 

ジョー:いつも通り、違うことをやるよ。もちろんイーヴル・インヴェイダーズらしい音だけど、俺たちはいつもバンドに新しい風を取り込みたいと思っているからね。今俺が書いているのは、ミッドテンポのスタイルのもの。ちょっとプログレッシヴでもある。まあ、マックスはまたバンド史上最高速の曲を書いてるから(笑)、良いコントラストになると思うよ。俺はそういうのが好きだからね。曲、あるいはアルバムごとに違った次元を持っているというのが。デモの仕上がりからすると、イーヴル・インヴェイダーズ最高のアルバムになるね。まだまだ時間はかかるし、デモは初期段階でしかないけれど。

 

― リリースは2020年でしょうか。

 

ジョー:だといいのだけど。ただ、今回は急ぎたくないんだ。前のアルバムでは、多少急がなくてはいけない部分があった。最終的には間に合わせることができたけど。今回のアルバムは、ステップアップして、前回よりもさらにずっと良いものを作らなくてはいけないからね。まあいつもそう思っているけど(笑)。

 

― では最後に日本のファンへのメッセージをお願いします。

 

ジョー:俺たちの音楽を聴いたことがない、あるいはライヴを見たことがない人は、ぜひ公開されている『サージ・オブ・サニティ』からのライヴ動画を見てみて欲しい。早くまた日本にも行きたいね。以前に2回行ったけど、どちらの時も最高だったし。日本のファンが大好きだから、早くまた行けるといいな。

 

 

文・取材  川嶋未来

 

10月4日発売

イーヴル・インヴェイダーズ『サージ・オブ・インサニティー~ライヴ・イン・アントワープ2018』

【DVD+CD】 GQBS-90437〜8 / 4582546590093 / ¥4,800+税

【日本語解説書封入/日本語字幕付き】

 

【DVD収録内容】

  1. イントロ
  2. アズ・ライフ・スローリー・フェイズ
  3. パルシズ・オブ・プレジャー
  4. ショット・トゥ・パラダイス
  5. メンタル・ペネテンシュアリー
  6. ブロークン・ドリームズ・イン・アイソレーション
  7. フィード・ミー・ヴァイオレンス
  8. ステアウェイ・トゥ・インサニティー
  9. アマング・ザ・デプス・オブ・サニティー
  10. オブリヴィオン
  11. マスター・オブ・イリュージョン
  12. ウィッチング・アワー (ヴェノム カヴァー)
  13. ファスト・ラウド・アンド・ルード
  14. レイジング・ヘル
  15. ヴィクティム・オブ・サクリファイス
  16. アウトロ:シェイズ・オブ・ソリチュード

 

【CD収録曲】

  1. イントロ
  2. アズ・ライフ・スローリー・フェイズ
  3. パルシズ・オブ・プレジャー
  4. ショット・トゥ・パラダイス
  5. メンタル・ペネテンシュアリー
  6. ブロークン・ドリームズ・イン・アイソレーション
  7. フィード・ミー・ヴァイオレンス
  8. ステアウェイ・トゥ・インサニティー
  9. アマング・ザ・デプス・オブ・サニティー
  10. オブリヴィオン
  11. マスター・オブ・イリュージョン
  12. ウィッチング・アワー (ヴェノム カヴァー)
  13. ファスト・ラウド・アンド・ルード
  14. レイジング・ヘル
  15. ヴィクティム・オブ・サクリファイス
  16. アウトロ:シェイズ・オブ・ソリチュード

 

【メンバー】

ジョー(ヴォーカル/ギター)

マックス・メイヘム(ギター)

ユーリ・ファン・デ・スコット(ベース)

センヌ・ヤコブス(ドラムス)

 

イーヴル・インヴェイダーズ 商品サイト

https://wardrecords.com/products/detail5182.html